
コレステロールが多く含まれることから、食べすぎはよくないといわれているたまご。
「たまごは1日1個まで」ともよく言われますが、最近ではたまごの食べる量は気にしなくていい、といわれることも。
実際のところ、たまごは「1日1個説」「いくらでも食べていい説」どちらを信じればいいのでしょうか?
食べものとからだの仕組みの関係から、解説します。
Contents
血中コレステロールと生活習慣病
「たまごは1日1個まで」といわれるのは、たまごに「コレステロール」が多く含まれるため。
コレステロールはヒトの体にとって必要な物質ですが、血液中に増えすぎるのも問題となります。
空腹時の血中LDLコレステロール値が140㎎/㎗以上になると、生活習慣病のうち、脂質異常症のひとつである「高LDLコレステロール血症」と診断されます。*1)
高LDLコレステロール血症を含む脂質異常症は、動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞の危険因子となることから、自覚症状がなくとも、改善のための取り組みが必要となります。
食品から摂取されたコレステロールは血中コレステロール値に影響を与えるため、コレステロールを多く含むたまごは「1日1個以内に」というふうに言われるようになったようです。
たまごのコレステロール含有量
食品成分表に収載されている食品では、乾物を除くとたまご(特に卵黄)はコレステロールが高い部類に入ります。
同じたんぱく源である肉類と比べても、
牛肩ロース 71mg/100g 豚肩ロース 69mg/100g 鶏モモ 89mg/100g 全卵 420mg/100g |
と、大きな差があります。*2)
補足:たまご以外にコレステロール含量の高いもの あんこうのきも・フォアグラ・すじこ・うずらたまご・たらこ・かずのこなど。 |
コレステロールは脂質の仲間ですが、エネルギー源として使われないためコレステロールそのものにカロリーはありません。
そのため、高エネルギー(カロリー)な食品かそうでないかはコレステロール量にはあまり関係ありません。
コレステロール摂取について現在の数値目標
日本人の食事摂取基準(2010年版)では、コレステロールの摂取量を18歳以上の男性で750㎎未満、18歳以上の女性で600㎎未満にとどめることを目標としていました。
たまご1個に含まれるコレステロールの量は、およそ250㎎。
ほかの食品からもコレステロールを摂取することを考えると、コレステロール量の多いたまごを1日にいくつも食べるのはよくない、となったのかもしれませんね。
しかし、日本人の食事摂取基準2015年版以降(現行は日本人の食事摂取基準(2020年版))では食事からのコレステロール摂取量が直接血中総コレステロール値に反映されるわけではない、として、1日あたりのコレステロールの摂取基準値をなくしました。
実は、コレステロールは体内でも作られており、脂質代謝に異常がない人では、食事から摂取した分と合わせて必要な量になるように調整されているため、血液中のコレステロールの量はほぼ一定に保たれています。
そのため、食事からのコレステロールが直接血液中のコレステロールを必ずしも増やすわけではないと考えられたのです。
とはいえ、食事からのコレステロール摂取量は血中LDLコレステロール値とは無関係といわれているわけではなく、コレステロールの摂取量について「上限がないことを保証するものではない」としています。
血中コレステロールを上げるたまご以外の要因
血中コレステロール値に影響を与える要因は食事から摂取したコレステロール以外にもあることが分かっています。
具体的には、肉類に多く含まれる飽和脂肪酸や肥満、運動不足、高血圧、喫煙など。
コレステロールや飽和脂肪酸の高い食品の食べすぎに気を付けるとともに、それ以外の生活習慣にも気を付けていきたいですね。
脂質異常症の場合の摂取制限
健康で、血中LDLコレステロール値が正常範囲にある人に対して摂取上限は定められていませんが、脂質異常症と診断された場合は摂取上限が定められます。
「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」では、高LDLコレステロール血症患者ではコレステロール摂取を200㎎/日未満とすると血中LDLの低下効果が期待できるとしていることから、食事摂取基準(2020年版)でも、「脂質異常症の重症化予防の目的としては200㎎/日未満にとどめることが望ましい。」としています。
まとめ
健康のための「たまごは1日何個まで」といったルールは存在しませんが、通常の範囲を超えた量を食べることが長期間に及ぶのは避けたほうがよさそうです。
また、血中コレステロールが気になる人は、たまごや食品に含まれるコレステロールだけでなく、飽和脂肪酸や運動習慣についても見直す機会が作れると理想的です。
血中コレステロール値が高い場合の食事について詳しく解説した記事はこちら
参考文献 *2)文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書 厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書 佐々木 敏:データ栄養学のすすめ.女子栄養大学出版部,2018. |