
「飲む点滴」ともいわれ、健康的な飲み物として注目されている「甘酒」ですが、具体的にはどのような栄養素が含まれているのでしょうか?
甘酒に含まれる栄養素について解説します。
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栄養的なデータ
甘酒には2種類…注目されているのは「米麹甘酒」
ひとくちに「甘酒」といっても、実は2種類あることをご存じでしょうか。
ひとつめは酒粕(日本酒の搾りかす)と砂糖を合わせた「酒粕甘酒」、
ふたつめはお粥をコウジカビの作用で糖化させた「米麹甘酒」です。
見た目はどちらも白く濁った飲み物ですが、風味は大きく異なります。
また、酒粕甘酒にはわずかにアルコールが含まれていますが、米麹甘酒にはアルコールが含まれていません。
このうち、近年健康的な食品として注目されているのは「米麹甘酒」です。
成分は製品によっても異なる
甘酒はそれぞれのメーカーの製法や、加える水分量などにより栄養価が異なります。
厚生労働省が発表している日本食品標準成分表のデータと、大手メーカーで市販されているそのまま飲める製品の100gあたりの栄養価をまとめたものがこちらの表です。
市販品A | 市販品B | 市販品C | 成分表・甘酒 | 成分表・全粥 | |
エネルギー | 61.6 kcal | 69 kcal | 74.4 kcal | 81 kcal | 71 kcal |
糖質 | 14.24g | 16.5g | 16.88g | 18.3g | 15.7g |
脂質 | 0g | 0g | 0.24 g | 0.1 g | 0.1 g |
タンパク質 | 1.2 g | 0.7 g | 1.28 g | 1.7 g | 1.1 g |
ナトリウム | 63.0㎎ | 47.2㎎ | 74.4㎎ | 60㎎ | 微量 |
食塩相当量 | 0.16g | 0.12g | 0.16g | 0.15g | 0g |
アルコール | – | – | – | – | – |
各社ホームページおよび文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より作成
※横スクロールで表全体の確認が可能です。
エネルギーや主成分は「おかゆ」とほぼ同じ
甘酒は約80%が水分で、主成分は糖質です。
たんぱく質や脂質は含まれているものの、量としては多くありません。
ビタミンやミネラルに関しては全く含まれないわけではないものの、豊富とは言いにくい量にとどまります。
エネルギーにばらつきはありますが、おおむね100gあたり70kcal程度です。
米を5倍の水で炊いた「全粥」とほぼ同じ成分で、エネルギーも同じくらい。
美容や健康に良いといわれますが、飲みすぎはカロリーオーバーにつながりますので注意しましょう。
コウジのはたらきによって糖に分解されている
甘酒の甘味は、米麹に含まれる「ニホンコウジカビ」という微生物の消化作用によるものです。
ニホンコウジカビは甘酒を作る際に米に含まれる鎖状の糖質(でんぷん)をバラバラに分解する性質があります。
バラバラになった糖質は甘味のあるブドウ糖やオリゴ糖などとなるため、甘く感じるようになるのです。
また、コウジカビの作用によって生産されるコウジ酸やデフェリフェリクリシンといった成分は機能性が期待されている成分でもあります。
甘酒の機能性について詳しく解説した記事はこちら |
利点を生かす使いかたと注意点
消化吸収に優れた飲み物として
通常、お米などのでんぷんは消化酵素のはたらきによって分解されてから体内に吸収されていきます。
いっぽうで、甘酒はコウジカビによってすでにお米のでんぷんがブドウ糖やオリゴ糖に分解されているため、消化吸収の負担が少ない食品です。
そのためか、江戸時代には栄養ドリンクのように飲まれていた甘酒。
食欲の落ちやすい夏場によく飲まれていたそうです。
もちろん現代でも、風邪や夏バテなどの体調不良の時のエネルギー摂取に最適。
そのほか、朝食を食べる時間のないときなど、手軽に栄養補給したいときにもおすすめです。
バナナなどを一緒に食べても、腹持ちがよくなっていいですね。
とはいえ、「飲む点滴」といわれる一方、本当の点滴のように必要な栄養素が調整されたものではありません。
甘酒だけでは糖質以外の栄養素の必要量を満たすのは難しいので、栄養バランスを整える目的で摂取したり、長期間の食事を甘酒だけに制限したりするのは避けましょう。
ダイエットには不向き
甘酒は消化吸収に優れていることにより、素早いエネルギー補給に適した半面、腹持ちはあまりよくないという特徴も。
なるべく摂取エネルギーを抑えたいダイエット中においては、
・よく噛んで少量の食事でも満腹感を得る
・消化吸収に時間がかかる食品で満腹感をキープ
といったことが重要ですが、甘酒に関しては正反対の性質。
甘酒はダイエットに活用するのは難しそうです。
まとめ:消化吸収のよい食品として、エネルギー補給に活用するのが◎
甘酒は消化吸収に優れた食品であり、からだが弱っている時でもエネルギーを取り入れやすいのが利点です。
食欲がないときや胃腸がつかれているときなどの栄養源として使うのに最適。
栄養バランスに優れた食品ではありませんので、使いどころに注意しながら活用したいですね。
参考文献 吉田勉 監修:「わかりやすい食品機能栄養学」.三共出版,2010. |