2022.05.02

「全粒粉」って健康的?かしこい取り入れ方とは|管理栄養士執筆

コンビニやスーパーなどのパン売り場でもよく見かけるようになった「全粒粉入り」の文字。

全粒粉を用いたパンや焼き菓子はほんのり茶色がかっている生地になるため健康的なイメージを持たれることも多いですが、具体的にはどんなメリットがあるのでしょうか?

全粒粉とは普通の小麦粉とどう違うのか、健康のための取り入れ方を紹介します。

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全粒粉入り食パン

「全粒粉」ってなに?

「全粒粉」は「小麦全粒粉」とも呼ばれる、小麦粉の一種です。
通常の小麦粉は小麦の粒から胚芽と表皮を取り除いた「胚乳」の部分のみを粉にしたものですが、全粒粉は、胚芽と表皮を取り除かずに製造されたものを指します。
全粒粉は重量のおよそ8割が通常の小麦粉と同じ胚乳、残り2割ほどがそれ以外の胚芽や表皮で構成されています。

全粒粉

小麦粉はたんぱく質の含有量により薄力粉や強力粉に分類されますが、全粒粉にもそれぞれ薄力タイプと強力タイプが存在します。

また、混同されやすい「小麦ブラン」は小麦の表皮(ふすま)のみを指す言葉で、一部同じものではあるものの、全粒粉とイコールではありません。

「全粒粉」の栄養・健康面での魅力とは?

健康的なイメージのある全粒粉。
通常の小麦粉と比較して、具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

カロリーや含有される栄養素について、日本食品標準成分表2020年版(八訂)のデータを用いて、一般的にパンによく使用される強力粉で比較してみました。

■エネルギー
強力粉:337kcal/100g
全粒強力粉:320kcal/100g

全粒粉のほうがやや低いものの、大きな差はありません。
小麦粉で作ったパンでも、全粒粉100%のパンでも、摂取するエネルギーに大きな差は出にくいようです。

■たんぱく質・脂質・炭水化物・食物繊維の含有量
強力粉:たんぱく質…11.8g 脂質…1.3g 炭水化物…73.5g 食物繊維…2.7g(すべて100gあたり)
全粒強力粉:たんぱく質…12.8g 脂質…2.9g 炭水化物…61.2g 食物繊維…11.2g(すべて100gあたり)

胚芽や表皮が含まれることで、通常の小麦粉よりも食物繊維が豊富で、また、たんぱく質と脂質がわずかに多く含まれるようです。
食物繊維は生活習慣病などの疾病の予防に役立つことから、摂取量を増やすことが望ましい栄養素のひとつです。
通常の小麦粉を全粒粉に変えた場合、食物繊維の摂取量を増やすことに役立ちそうですね。

■ビタミン、ミネラル
強力粉:カリウム…89㎎ マグネシウム…23㎎ 鉄…0.9㎎ ビタミンB1…0.09㎎ ビタミンB6…0.06㎎(すべて100gあたり)
全粒強力粉:カリウム…330㎎ マグネシウム…140㎎ 鉄…3.1㎎ ビタミンB1…0.34㎎ ビタミンB6…0.33㎎(すべて100gあたり)

一部のビタミン及びミネラルにおいて、通常の小麦粉よりも全粒粉で含有量が多くなっていました。
ビタミンやミネラルは小麦粉などの穀類だけからとっているわけではなく、全粒粉をとったからと言ってサプリメント的に必要量を満たせるというものではありませんが、単純な摂取栄養素の量としては増やすことができそうです。

「全粒粉入り」なら食物繊維たっぷりで健康的?

通常の小麦粉と全粒粉の栄養成分において、もっとも大きな違いとなるのが「食物繊維」の含有量です。

食物繊維の摂取量が増えると糖尿病や循環器疾患などの生活習慣病、乳がん・胃がん・大腸がんなどの発症率が低下することが報告されており、日本人の食事摂取基準2020年版でも、現在の平均的な摂取量よりも多い量が目標値に設定されています。

よって、食物繊維を増やすという意味では、全粒粉を使った食品(具体的には全粒粉入りパンなど)は、通常の小麦粉と比較して健康的な食品と考えることもできそうです。

しかし、「全粒粉入り」であればどれも選ぶ価値のあるものか…というと、そうとは限りません。

全粒粉は一般的に家庭で「全粒粉そのもの」を使うことは少なく、「全粒粉を使用した加工品」を購入する場合が多いのではないでしょうか。
加工品の場合、全粒粉の使用率は製品によっても異なり、小麦粉はすべて全粒粉を使用したものもあれば、小麦粉のうち全粒粉の使用量は数%程度…というものも。

全粒粉の使用率が高いものであれば食物繊維の摂取量も効果的に増やせるかもしれませんが、使用率が低い場合には全粒粉が入っていないものとほとんど変わらないということも考えられます。

よって、「全粒粉入り」といわれていても、必ずしも食物繊維が豊富とは言えません。
実際にどのくらい食物繊維が取れるか…というのは、製品によっても異なるため、それぞれの栄養成分表示などを確認し、含有量を確認する必要があります。

「全粒粉入り」の製品はどう取り入れるのが正解?

健康的なイメージのある全粒粉。
実際の食生活ではどのようなスタンスで取り入れるのがよいのでしょうか?

■独特の風味を楽しむものとして
小麦の胚芽や表皮が含まれることで、全粒粉を使用した製品は通常の小麦製品と異なる風味があるものも。
いつもと違う味わいを楽しむため…というのも、「全粒粉入り」を選ぶ理由になるでしょう。

■含有量を確認しつつ、食物繊維の摂取源として
製品ごとの全粒粉の使用量により、必ずしも食物繊維が豊富に含まれるとは限りませんが、「全粒粉入り」のものは食物繊維が通常より多い(かもしれない)ものの目印として、選ぶときの参考になりそうです。
できれば栄養成分表示などを確認し、実際の食物繊維含有量を確認するのがおすすめです。

■おなかが弱っている人には注意が必要かも
食物繊維は人の消化管で消化吸収をされないため、腸の刺激になる性質があります。
全粒粉などの食物繊維の多い食品は、消化吸収能力の低い乳幼児や胃腸のはたらきが弱っている人には負担になる場合も。
消化の良い食品が求められる場面では食物繊維の多い食品をあえて食べさせる必要はないため、状況に応じて選択するようにしましょう。

まとめ 「全粒粉入り=健康的」とは限らないので個別にチェックを

健康イメージのある全粒粉ですが、加工品の場合には必ずしもその魅力が生かされているとは言えないようです。

「全粒粉入り」はひとつの目印として、正確で詳しい情報は栄養成分表示などの数値的なデータを確認するのがよさそうです。

参考文献

文部科学省:「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

木下製粉株式会社:「小麦粉のできるまで」

木下製粉株式会社:「小麦ふすまとブラウワー」

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。