
皮つきと皮むき、栄養価はどう変わる?
日本食品標準成分表2015年版(七訂)を用いて、皮と身の境目が分かりにくいにんじん、皮と身の違いがはっきり分かるじゃがいもを例に比べてみました。
にんじん
皮むき 皮つき
エネルギー 36kcal 39kcal
水分 89.7g 89.1g
たんぱく質 0.8g 0.7g
脂質 0.1g 0.2g
炭水化物 8.7g 9.3g
食物繊維 2.4g 2.8g
カリウム 270㎎ 300㎎
β-カロテン 6700㎍ 6900㎍
レチノール当量 690㎍ 720㎍
ビタミンC 6㎎ 6㎎
*100gあたり
じゃがいも
皮むき 皮つき
エネルギー 83kcal 85kcal
水分 78.0g 77.6g
たんぱく質 1.9g 2.1g
脂質 0.1g 0.2g
炭水化物 19.0g 19.2g
食物繊維 3.5g 3.9g
カリウム 430㎎ 430㎎
ビタミン C 23㎎ 13㎎
*100gあたり・電子レンジ理後
成分分析に使われたサンプルの個体差などがあるものの、傾向としては
皮つきは皮むきと比較して
水分がやや少なく、その分炭水化物や食物繊維、ビタミン等の栄養素の密度が高くなっているようです。
皮をむいた身だけよりも皮つきのほうが栄養素が多いことは間違ってはいませんが、その差はさほど大きくないのが実態のようですね。
皮をむくことで「損する」栄養素はどのくらい?
日本食品標準成分表2015年版(七訂)には、にんじんにおいて「皮のみ」の栄養価も記載されていました。
にんじん1本分の皮には、どのくらいの栄養素が含まれているでしょうか?
にんじん1本は約200g、そのうち皮は7%の14gと仮定します。
1日の摂取栄養素の量は、食事摂取基準2020年版の30~49歳女性の値を使用します。
エネルギー 4kcal
水分 12.7g
たんぱく質 0.1g(摂取推奨量の0.2%)
脂質 0g
炭水化物 1.0g
食物繊維 0.5g(摂取目標量の2.8%)
カリウム 88㎎(摂取目標量の3.4%)
β-カロテン 940㎍
レチノール当量100㎍(摂取推奨量の14%)
ビタミンC 1㎎(摂取推奨量の1%)
にんじん1本分の皮を食べた場合でも、余分に取れる栄養素は1日に必要な量を考慮するとさほど多いとは言えず、皮の有無によって摂取量は変わるものの、さほど気にするほどの量ではなさそうです。
野菜は皮つきで食べるべき?
ここまでの比較から、にんじんやじゃがいもの場合、食物繊維など皮に比較的多く含まれる栄養素があることは確かですが、「皮にこそ!」というほどの量ではない…というのが実際のところのようです。
また、野菜に含まれる栄養素の量は、皮の有無だけではなく、品種や収穫場所、収穫時期、個体差によっても異なります。
皮をむかないことによって食べられる量が増え、摂取できる栄養素は増えるものの、それ以外の要素にも影響されることも知っておきたいポイントです。
栄養価以外のメリット・デメリット
皮つき・皮むきの違いによる、栄養価以外のメリットやデメリットにはどんなものがあるでしょうか?
■皮つきのメリット
皮むきの手間が省ける:調理中の手間が減り、時短につながります。
生ごみが減る:ごみの量が減ればエコにつながるかもしれません。
皮が彩りになることも:サツマイモやリンゴなど、皮の色がアクセントになるものもありますね。
■皮つきのデメリット
見た目に劣ることがある:にんじんなどでは皮むきのほうがきれいに仕上がります。
皮が固く食べにくい場合もある:かむ力の弱い乳幼児などには向かない場合も。
じゃがいもはソラニンに注意:緑色っぽくなった皮にはソラニンが含まれるため、必ずむいて使いましょう。
皮つきの食材について、残留農薬等を心配する声もありますが、検査時には皮付きのまま検査されたうえで基準値以下であることが確認されるので、皮つきでも全く問題はありません。
見た目に関しては、食材によりけりですが、普段の食事かおもてなしの食事か…という風に、状況に応じて使い分けるのがよさそうです。
食べる人や食事シーンに合わせるのが一番かも?
野菜の皮にも栄養素は含まれていますが、皮をむくことによる損失を心配するほどの量ではなさそうです。
むしろ、栄養価の違いよりも、見た目や食べやすさに違いが出やすいように思います。
栄養面では、皮つきでも皮むきでも大きな問題はありませんので、食事シーンに合わせたり、食べる人の状況に合わせて、より食べやすい状態にしていくのが大事なポイントではないでしょうか?
参考文献
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」