2020.12.14

トランス脂肪酸の影響とは。どう気を付ける?|管理栄養士執筆

食品にはいろいろな成分が含まれていますが、その中でもトランス脂肪酸は「なんとなく怖いもの」として広く認識されているのではないでしょうか。

なんとなく怖いけどよく知らないトランス脂肪酸をとることによる影響と、将来の健康のために気を付けたいことを紹介します。

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ファットスプレッド

トランス脂肪酸とは?体にどう悪い?

トランス脂肪酸とは、油脂の構成成分である「脂肪酸」、そのうち「不飽和脂肪酸」に属する物質です。

自然に存在する不飽和脂肪酸の多くは「シス型」と呼ばれる形状をとっていますが、トランス脂肪酸は「トランス型」と呼ばれる形になっています。

シス型とトランス型

トランス脂肪酸は植物油などの常温で液体の油をマーガリンなどの常温で固体の油に人工的に変えるときに副産物として産生される物質です。

トランス脂肪酸は血中LDLコレステロールを増やし、HDLコレステロールを減らす作用を持ち、冠動脈疾患の発症リスクを高めることが知られています。

自然に存在する油脂に含まれる「飽和脂肪酸」も同様の作用を持ちますが、トランス脂肪酸では血中コレステロール値に与える影響が飽和脂肪酸の2倍強いことが、トランス脂肪酸が危険視される理由のひとつと考えられます。*1)

トランス脂肪酸は天然には乳製品や肉類に含まれているものもありますが、血中コレステロール値などへの影響があるのは、人工的に作られたトランス脂肪酸のみと報告されています。*2)

トランス脂肪酸の摂取源となるのは?

普段の食生活において、私たちはどんな食品からトランス脂肪酸を摂取しているのでしょうか?

トランス脂肪酸は液状油を固形油に変えるときにできる物質で、マーガリンやショートニング、ファットスプレッドなどの製造時に生じます。

さらに、これらの油脂を使用した加工食品等もトランス脂肪酸の摂取源となっています。

日常的な食事におけるトランス脂肪酸の摂取源はスナック菓子やビスケット類・ケーキなどの菓子類、マヨネーズ・サラダドレッシング・植物油などの油脂類、デニッシュやケーキドーナツを含む菓子パン類が大部分をしめており、主な摂取源はマーガリンやファットスプレッドそのものよりも菓子類・パン類・油脂製品が多くなっているようです。*3)

菓子パン・ドーナツ

私たちの摂取量は大丈夫?

2010年の調査では、私たち日本人のトランス脂肪酸摂取量は、1日あたり1.7gで、総摂取エネルギーの0.7~0.8%を占めることが報告されています。*3)

この摂取量は、世界保健機関(WHO)の提言する目標量*4)である総摂取エネルギーの1%未満をクリアしており、直ちに対処が必要な状態ではないと考えられます。

トランス脂肪酸の摂取量がWHOの目標値を上回っている国においては、トランス脂肪酸の摂取量を減らすため、含有量の表示義務や含有量の制限などの規制が行われています。

いっぽう、日本では摂取量の上限値の設定などはなく、販売されている食品に対する規制もありません。

とはいえ、問題がないと考えられているのはあくまで平均値。
上で紹介した菓子類・パン類・油脂類に偏った食事をとっている人では、WHOの目標値を上回っていることも考えられますので、注意したいところです。

実は、ほかのリスク要因も合わせて注意したい

トランス脂肪酸の影響は注目されている一方、同じ作用を持つ飽和脂肪酸はあまり注目されていない印象があります。

飽和脂肪酸は肉類や乳製品の脂肪分に比較的多く含まれており、血中のLDLコレステロールを増やしてHDLコレステロールを減らしてしまう作用の強さはトランス脂肪酸の半分程度と考えられていますが、その摂取量は総摂取エネルギーの7.2%と、およそ9倍にもなり、実際に与えている影響は、トランス脂肪酸よりも大きいことが分かっています。*5)

また、冠動脈疾患は糖尿病や高血圧、喫煙などが発症にかかわる生活習慣病のひとつです。
トランス脂肪酸の摂取量も発症リスクの増加にかかわりますが、その影響は喫煙・糖尿病・高血圧がある人のほうがリスクは高いと考えられています。
(トランス脂肪酸の摂取量が多い人は、少ない人と比較して冠動脈疾患発症リスク1.3倍*2)、喫煙・糖尿病・高血圧がある人はない人と比較して冠動脈疾患の発症リスクが3~8倍*6))

トランス脂肪酸の摂取量に気を付けることは大事なことですが、トランス脂肪酸以上に冠動脈疾患発症にかかわる要因についても、合わせて注意するようにしたいですね。

まとめ 総合的な生活習慣病予防が大事

トランス脂肪酸は血中コレステロールに影響し、冠動脈疾患の発症リスクを高めることが問題視されている物質です。

平均的な食生活ではトランス脂肪酸の摂取による影響はさほど大きくないものと考えられますが、菓子類や脂質に偏った食生活では、過剰摂取が心配されるかもしれません。

とはいえ、偏った食事内容では、トランス脂肪酸だけでなく、より強い冠動脈疾患のリスク要因となる飽和脂肪酸の過剰摂取・糖尿病・高血圧などを引き起こす可能性が考えられます。

このことからも、トランス脂肪酸のみに注目するのではなく、飽和脂肪酸の過剰摂取や生活習慣病につながりにくい「バランスのとれた食生活」を目指すのが、将来にわたって健康を維持するために、もっとも大事なポイントといえるのではないでしょうか。

参考文献

*1)厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

*2)Bendsen NT, Christensen R, Bartels EM, et al. Consumption of industrial and ruminant trans fatty acids and risk of coronary heart disease: a systematic review and
meta-analysis of cohort studies. Eur J Clin Nutr 2011; 65: 773─83.

*3)Yamada M, Sasaki S, Murakami K, Takahashi Y, Okubo H, Hirota N, Notsu A, Todoriki H, Miura A, Fukui M, Date C. Estimation of trans fatty acid intake in Japanese adults using 16-day diet records based on a food composition database developed for the Japanese population. J Epidemiol. 2010; 20(2): 119-27.

*4)Joint WHO/FAO Expert Consultation on Diet, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases (2002 : Geneva, Switzerland) Diet, nutrition and the prevention of chronic diseases: report of a joint WHO/FAO expert consultation, Geneva, 28 January — 1 February 2002.

*5)Kobayashi S, et al. Both comprehensive and brief self-administered diet history questionnaires satisfactorily rank nutrient intakes in Japanese adults. J Epidemiol 2012; 22: 151-9.

*6)Kawano H, Soejima H, Kojima S, et al. Sex differences of risk factors for acute myocardial infarction in Japanese patients. Circ J 2006; 70: 513─7.

内閣府食品安全委員会. ファクトシート「トランス脂肪酸」, 最終更新日 平成22年12月16日

佐々木 敏:「佐々木敏の栄養データはこう読む!」.女子栄養大学出版部,2015.

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。