
大豆ミートとは?
大豆ミートは、ソイミート、ベジミートなどとも呼ばれる大豆由来の「お肉風食品」です。
主原料は大豆で、油分を搾り取ったあとの脱脂大豆を加熱、加圧、高温乾燥させて作られます。
製品やメーカーによって大豆100%からなるもの、つなぎとなる原料や調味料を加えたものなど、様々なものが存在します。
菜食主義の人でも食べることができ、健康的で地球環境にも優しいお肉の代用品としても注目されています。
単純に従来のお肉の代用品・代替品としては、ほかに大豆以外の植物原料由来のもの、お肉の細胞を培養して作られたものもあります。
大豆ミートにはいろいろなタイプがあり、価格もさほど高くない
大豆ミートは水でもどして使う乾燥タイプ、調味料などが加えられ、水戻しがいらないレトルトタイプ、ソーセージやナゲット、パスタソースなどに加工されたものなど、その形態はさまざまです。
製品タイプによっても価格は異なりますが、最も加工度の低い乾燥タイプの場合、水戻し換算で100gあたりの価格は120~170円前後。
身近なお肉と比較しても特別に高価ということはなく、手に取りにくいということはなさそうです。
大豆ミートの栄養価は?
大豆ミートとひとくくりに言っても、メーカーや製品ごとの原材料等の細かな違いから、どの製品も同じ栄養価であるわけではありません。
そのため、大豆ミート製品の正確な栄養価については、それぞれの製品情報を確認するのが確実です。
この記事では代表値として、文部科学省から発表されている日本食品標準成分表2020年版(八訂)の「粒状大豆たんぱく」のデータを引用します。
大豆ミートと肉類の栄養価では、脂質と炭水化物の含有バランスが異なるところが違いといえます。
肉類はたんぱく質に加えて脂肪組織に多い脂質が多く、炭水化物はほとんど含まれません。
一方で大豆ミートは脂肪分を取り除いた大豆を原料としており、脂質が少なく、反対に大豆由来の炭水化物が比較的多く含まれます。
牛肉は鉄分が吸収率の良いヘム鉄のかたちで多く、豚肉にはビタミンB1が、鶏肉はビタミンB6が比較的多く含まれる点が特徴です。
大豆ミートでは肉類と比較してカリウムやカルシウム、鉄分(吸収率のあまりよくない非ヘム鉄ではあるものの)が豊富という特徴があります。
*鉄分の吸収率は食品によって異なり、ヘム鉄では50%、非ヘム鉄では15%とも報告されています。
どちらがより優れた食材…ということではなく、それぞれの個性があるととらえるのがよさそうです。
このほか、食物繊維や飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、コレステロールなどの栄養素は、その摂取量が生活習慣病リスクに影響することが知られています。
・飽和脂肪酸:血中LDLコレステロール濃度を上げる方向にはたらく
・多価不飽和脂肪酸:血中LDLコレステロール濃度を下げる方向にはたらく
・コレステロール:血中コレステロール値を上げる方向にはたらく
・食物繊維:習慣的な摂取量が増えるほど各種生活習慣病の発症率が下がることが報告されている
このことから、各種肉類と比較すると生活習慣病のリスクにつながりにくい食材といえるかもしれません。
とはいえ、生活習慣病のリスクについては、個別の食品よりも食事全体をみることが重要です。
大豆ミートがほかの肉類と比較してリスクにつながりにくい食材だったとしても、そのほかの食事の影響をカバーできるようなものではありません。
生活習慣病予防のための食事の「一部」として、大豆ミートを取り入れるのがいいかもしれません。
栄養価以外の魅力も
大豆ミートは栄養面以外の魅力から選ばれるものでもあります。
菜食主義や宗教上の理由から肉類が食べられない人でも食べられるという面のほか、肉類(特に牛肉)と比較して生産にあたって排出される温室効果ガスが少なく環境負荷の少ない「地球にやさしい食材」という面も。
大豆ミートという選択肢が増えることで、食事の幅が広がることは喜ばしいことですね。
まとめ 自分に合うものを選ぼう
大豆ミートは植物由来のお肉の代替品として、肉類とは違う栄養的特徴を持つことがわかりました。
どちらがより優れた食材、ということではなく、違いを持った食材のバリエーションのひとつとしてとらえるのがよいでしょう。
たんぱく質に伴う脂質を控えたい、食物繊維をとりたい、植物由来の食品を選びたい、環境にやさしい食品を選びたい…などの要望があるときには、心強い選択肢の一つとなりそうです。
参考文献
文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書
Young MF, Griffin I, Pressman E, et al. Utilization of iron from an animal-based iron source is greater than that of ferrous sulfate in pregnant and nonpregnant women. J Nutr 2010; 140: 2162─6.
米国FAO:温室効果ガスの排出量削減のための畜産の取り組みについて
佐々木 敏:「佐々木敏の栄養データはこう読む!」.女子栄養大学出版部,2015.