
ダイエットで体脂肪を減らすために必要なことは?
「ダイエット」とひとくちに言っても、その意味するところは場合によってさまざま。
体脂肪を減らすものを指す場合のほか、便秘・むくみなどの解消も含めて体重を減らすことを指す場合もあります。
数日程度で変動するような一時的な変化ではないダイエットの場合は、このうち体脂肪を減らすものが当てはまります。
体脂肪の蓄積は、日々の摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスによって決まります。
摂取が多いときは余ったエネルギーを体脂肪として蓄積しますが、消費が多いときは反対に体脂肪からエネルギーを消費します。
つまり、体脂肪を減らすダイエットをしたい場合には、摂取エネルギーよりも消費エネルギーが多い状態を作る必要があります。
ダイエットに効果のある食べ物とは…
摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスによって体脂肪の増減が起こることを考えると、「ダイエットに効果のある食べ物」とは、
・摂取エネルギーを低くするもの(量の割にカロリーが低い、カサ増しになるなど)
または
・消費エネルギーを増やすもの(食べるとエネルギー代謝が増えるなど)
ということが考えられそうです。
辛い食べ物がどちらかに当てはまればダイエットに役立つともいえそうです。
辛い物を食べると暑くなる!エネルギーは消費されてる?
一般的に辛い食べ物とはトウガラシなどの香辛料や香辛料のきいた料理を指します。
香辛料そのものは食事のカサ増しになることは考えづらく、また、香辛料を多く使った料理はカロリーの多いものも少ないものもあるため、辛い食べ物が一般的に摂取エネルギーを低く抑えることに役立つことは考えにくいでしょう。
となると、可能性が残るのは消費エネルギーを増やす効果です。
辛い物を食べると体が熱くなるのを感じ、汗も出てきますね。
体温の維持や上昇は、体内のエネルギーを消費して行われるため、汗をかくほど暑くなるのであれば、その分のエネルギー消費も起こっているように思えます。
しかし、辛い物を食べると熱く感じるのは、味覚によるもの。
トウガラシのカプサイシンや黒コショウのピペリン、生姜のショウガオールなどの辛味成分が口の中の熱さを感じる部分(TRPV1受容体)を刺激することで、実際の温度・体温にかかわらず脳が「熱い」と感じてしまうのです。
しかし、辛い物を食べても実際には体感ほど体温は上がっているわけではないため、辛い物を食べてエネルギーを消費しているとは考えにくいでしょう。
トウガラシにエネルギー消費を促す作用がある?
辛い物全般を食べることによるエネルギー消費は期待できないものの、トウガラシの辛味成分カプサイシンについて、エネルギー代謝を促す作用があることが期待されているようです。
ラットを使った実験において、エサにカプサイシンを添加したところ、体重の変化こそ見られなかったものの、体内の脂肪組織の量や血中の中性脂肪値が低下したことが報告されています。
このことから、カプサイシンにはエネルギーの消費を促す作用がある可能性が示唆された…としています。
しかし、この実験はあくまでラットを対象としたものであり、ラットとは異なる体の構造・機能を持つヒトにも同じ効果があるかまで判断することはできません。
また、この実験では栄養素のバランスが私たちの日常的な食事バランスよりも脂質に大きく偏ったものであり、ヒトの場合ダイエット以前に肥満や生活習慣病が心配です。
1日あたりのカプサイシン摂取量がヒト換算で1日トウガラシ10本分に相当する計算にもなり、毎日食べるようでは、胃腸への負担が気になります。
いずれにしてもこの実験の内容をそのままヒトに当てはめて考えるのは困難であり、現状では、トウガラシや唐辛子を使った料理をダイエットに取り入れる理由にはなりにくいでしょう。
まとめ 食べ物の作用で痩せるのは難しそう
トウガラシに限らず、食べることで目に見えるようなエネルギー消費の効果がある食べ物というものは見つかっていないのが現状です。
また、辛い食べ物の場合、食欲を刺激して食べすぎにつながることもあるので気を付けたいですね。
結局は、ダイエットを成功させるためには運動などを増やして消費エネルギーを増やすか、食事の工夫で摂取エネルギーを減らす…という地道な方法が今のところ一番確実な方法といえそうです。
参考文献
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(トウガラシ属について)
厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書
川端二功. スパイスの化学受容と機能性. 日本調理科学会誌 Vol. 46,No. 1,1~7(2013)
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Kawada T, Hagihara K, Iwai K. Effects of capsaicin on lipid metabolism in rats fed a high fat diet. J Nutr. 1986;116(7):1272-1278. doi:10.1093/jn/116.7.1272