2022.02.21

鶏肉は生食NG?九州の鳥刺しはなぜ食べられる?|管理栄養士執筆

鶏肉はよく火を通すべきといわれる一方で、地域によっては鳥刺し、鶏のたたきなどの生食文化もあります。

鶏肉の生食は危険なのでしょうか?
鶏肉由来の食中毒とその予防法、生食に関する法規制について紹介します。

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鶏肉の生食

鶏肉には高い確率で食中毒菌が存在

鶏肉は生食できるか…といわれたら、答えは「原則、生食できない」となります。

鶏肉は60%(調査によっては100%とも)以上の確率でカンピロバクターという食中毒菌に汚染されており、生または生焼けの鶏肉を食べることによってカンピロバクター食中毒を引き起こす恐れがあるとされています。

カンピロバクター食中毒とは?

カンピロバクター食中毒の特徴のひとつが、発症頻度が高いことです。
厚生労働省が発表している食中毒の発生状況についての資料では、令和2年(2020年)の細菌性食中毒273件のうち、182件がカンピロバクターによるものでした。
1件当たりの患者数は少ないものの、比較的起こりやすい食中毒であることがわかります。

カンピロバクター食中毒の原因となる主な感染源は生および加熱不十分の鶏肉、鶏レバーです。
食後1~7日で発症し、下痢や腹痛、発熱などの症状がみられます。
命にかかわるような症状が出ることはほとんどありませんが、まれに(0.1%)ギラン・バレー症候群という疾患を引き起こすことがあります。
ギラン・バレー症候群は重症の場合には呼吸不全などを起こすこともあり、危険な疾患です。

健康な鶏であっても、多くはカンピロバクターを消化管内に保有しています。
そのため、カンピロバクター食中毒を起こした場合に鶏の飼育や食肉の加工が不適切・不衛生であったということではありません。
解体中に鶏肉にカンピロバクターが付着するのは「原則、仕方のないこと」であるため、鶏肉を食べる際には加熱による殺菌が必須となるのです。

カンピロバクターは比較的少ない菌量でも発症することが知られています。
常温で長時間放置して菌が増殖した…などの場合でなく、きちんと冷蔵されていても、食中毒が起こらないわけではありません。

このようなことから、鶏肉の生食に関しては「新鮮だから大丈夫」ということはありません。

カンピロバクター食中毒を防ぐには

カンピロバクター食中毒に対する最も効果的な予防法は加熱殺菌です。
鶏肉の中心温度が75℃以上になってから、さらに1分以上の加熱をするようにしましょう。
また、生の鶏肉が触れた調理器具や手指はしっかり洗浄・殺菌し、ほかの食材(特に生食する食材)に菌が移るのを防ぎましょう。

鶏肉の加熱調理

また、付着したカンピロバクター菌を取り除く目的で、生の鶏肉を水洗いするのはかえって危険です。
カンピロバクターを含む水分が広範囲に飛び散り、鶏肉が触れていない食材、調理器具、食器などにも付着する恐れがあり、二次汚染による食中毒の原因となります。
生の鶏肉及びカンピロバクター菌が触れる範囲は最小限に抑え、しっかり洗浄・殺菌を行うことが重要です。

鶏肉の生食に関する法規制はある?

豚肉や豚の内臓、牛のレバーは生食用としての販売は法律で禁止されているものの、鶏肉の生食に関しては明確な法規制はありません。
そのため、多くの飲食店で鳥刺し、鶏のたたきなどが提供されていても罰されることはないわけですが、これは法規制がない=生食OKということではなく、「生食が想定されていない」というのが実際のところのようです。
よって、国による鶏肉の生食に関するルールやガイドラインは存在せず、鶏肉の生食に関しての安全性は提供する店の意識や技術などに依存している状態です。

一方、もともと鶏の生食文化のある南九州(鹿児島県・宮崎県)では、独自にガイドラインを作成し、安全性を確保する取り組みもあります。
しかし、そのような取り組みを行っている鹿児島県でも、
・一般的に食肉の生食は食中毒のリスクがある
・子供・高齢者。食中毒に対する抵抗力の弱い人は控えること
…といった表現を行っており、ガイドラインを守って提供されたものでも、絶対的に安全であるとは言えないようです。

まとめ 基本的には生食NGであると理解しよう

鶏肉の生食に関して、国による法規制はなく、安全に食べるための取り組みが行われている地域もあるものの、絶対の安心・安全はありません。

食中毒を確実に防ぐためにはやはり加熱による殺菌が必要であり、生食は基本的にはすべきでない…と考えるのがよいでしょう。

参考文献

厚生労働省:「食中毒統計資料」

食品安全委員会:「カンピロバクターによる食中毒にご注意ください」

酪農学園大学動物薬教育研究センター:「ペルーでギラン・バレー症候群が集団発生」

厚生労働省:「細菌による食中毒」

東京都福祉保健局:「ちょっと待って!お肉の生食」

東京都福祉保健局:「生食用の肉に法規制等があるのですか?」

鹿児島県:「生食用食鳥肉等の安全確保について」

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。