投稿日:2020.12.21 | 最終更新日:2020.11.27

牛乳で下痢に…乳糖不耐症の栄養補給のポイント|管理栄養士執筆

体が成長していく時期の子どもたちにとって、牛乳はカルシウムの効率的な摂取源として重要な食品のひとつ。
毎日飲むということも珍しくありません。
しかし、牛乳を飲むとおなかがゴロゴロ、ゆるくなってしまうという人は少なくなく、
2~3歳以上の幼児においても症状が出る場合も。

心当たりのある人は、もしかしたら「乳糖不耐症」かもしれません。

乳糖不耐症の特徴と対処法、乳アレルギーとの違いを解説します。

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牛乳を飲む子ども

乳糖不耐症ってどんな状態?

乳糖不耐症とは、母乳や牛乳などに含まれる「乳糖」を分解吸収できない状態のこと。

小腸から分泌される、乳糖を分解し吸収できるようにする酵素(乳糖分解酵素、ラクターゼ)の分泌量が不足することで、消化吸収されなかった乳糖が腸内を刺激し、また、大腸での水分吸収を阻害するためにおなかがゴロゴロしたり、下痢を起こしたりします。

ほんの少量の牛乳でもおなかを壊すということではなく、成人の場合牛乳で250~375ml以上をとった時など、比較的多い量を摂取したときにあらわれるようです。

乳糖不耐症には2種類あり、
①生まれつき乳糖分解酵素が分泌されないタイプ
②成長に伴って乳糖分解酵素の分泌が減るタイプ

①では母乳やミルクからの乳糖も吸収できないため治療が行われますが、②の場合、乳児期は問題なく乳糖を分解できるものの、2~3歳以降に症状が現れることが多いようです。

今回は、頻度の高い②成長に伴って乳糖分解酵素の分泌が減っておこる乳糖不耐症について解説します。

生まれつきの乳糖不耐症は栄養失調の恐れがあるため、不安な方は医療機関に相談するようにしてください。

アジア人の大人ではほぼ全員が乳糖不耐症?

成長に伴って起こる乳糖不耐症は、実は珍しいことではありません。

母乳やミルクから主な栄養を得ている時期では多くの人が乳糖分解酵素を多く持ちますが、成長に伴って分泌量が減ることが知られています。

そのため、個人差はあるものの、2~3歳以降のほとんどの人は乳児期よりも乳糖を分解する能力は落ちています。
乳糖不耐症と判断される人は、全人口の約70%にのぼるともいわれ、アジア人の大人では90~100%の人が乳糖不耐症であるとも言われています。
5歳未満の場合でも、アジア人の子どもでは20%に乳糖を吸収できていないとするデータもあるようで、病気というよりも成長に伴う変化ととらえたほうが実態と近いのかもしれません。

乳アレルギーとは違う?

どちらも下痢の症状がみられるため、混同されやすい乳糖不耐症と乳アレルギーですが、根本的に異なるものなので区別が必要です。

乳糖不耐症は乳糖を消化吸収できないことで起こりますが、乳アレルギーは本来無害な乳成分に対して免疫が過剰反応することで起こります。

アレルギーでは下痢だけでなく発疹や呼吸困難などの症状が出ることも。
アレルギーの疑いがある場合には、自己判断せず、医療機関を受診するようにしてくださいね。

成長期の子どもたちへの食事の工夫

牛乳はカルシウムやたんぱく質の摂取源として、体が成長していく時期の子どもたちにとって大きな役割を果たす食材のひとつです。

しかし、飲むたびに腹痛や下痢を起こす場合には無理に飲ませる必要はありません。
乳糖不耐症に対する食事の工夫ポイントを紹介します。

食事の工夫① 一度に飲む量を少量にする
乳糖不耐症であっても、成人の場合250ml未満などの一定の範囲内であれば症状が出ない場合が多いようです。
それぞれの乳糖分解酵素の分泌の程度や体の大きさなどにも影響されると考えられるものの、「このくらいまでなら飲める」という量を見極められれば、食生活への影響は少なく抑えられそうです。

食事の工夫② 牛乳そのものではなく、乳製品にする
牛乳を原料とする食品も牛乳と同様に吸収率のよいカルシウム源として優秀です。
ヨーグルトやチーズなどの乳加工品では、製造の過程で乳糖が分解されるなどにより牛乳そのものよりも乳糖不耐症の症状が起こりにくくなっています。
また、冷たい状態よりも温かい状態のほうが胃腸への負担が少なくなるため、牛乳を使ったシチューなど、温かい料理から摂取するというのもひとつの方法です。

食事の工夫③ 乳糖を減らした牛乳を選ぶ
どこでも手に入るわけではありませんが、乳糖を分解した牛乳(乳飲料)も販売されています。
乳製品ではなく冷たい牛乳が飲みたい!という場合の選択肢として、知っておくといいかもしれません。

食事の工夫④ 牛乳以外のカルシウムが豊富な食品
カルシウムの含有量やその吸収率の高さからカルシウムの摂取源として重要視される牛乳ですが、カルシウムは乳製品以外からもとることができます。

乳製品以外でカルシウムを多く含むのはシラスや煮干し、干しさくらえびなどの小魚類、お豆腐などの大豆製品のほか、小松菜やゴマなど。
牛乳や乳製品が取れない場合でも、このような食材をこまめにとることによってカルシウムの摂取量を上げることができます。

小魚類は塩分が気になるので、あまり偏りすぎないと安心です。

うまく工夫して栄養摂取を

幼児期は体の大きさの割に必要とする栄養素が多く、また、いろいろな食材を知っていく時期であるため、なるべくならたくさんの食べ物を食べさせてあげたいものです。

とはいえ、下痢などの症状を起こしてまで無理にとらせる必要はありません。
乳糖不耐症の場合には、摂取の仕方や量を工夫したり、牛乳以外の食材も取り入れながら、上手に栄養補給をしたいですね。

参考文献

MSDマニュアル家庭版:「乳糖不耐症」

Heyman MB; Committee on Nutrition: Lactose Intolerance in Infants, Children, and Adolescents. Pediatrics, 118(3):1279-1286, 2006.

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。