2021.08.09

熱中症対策のための飲み物はどう選ぶ?|管理栄養士執筆

暑い時期には熱中症に注意が必要です。

主な熱中症対策のひとつが飲み物による水分補給ですが、熱中症対策のためにはどのような飲み物がよいのでしょうか?

熱中症がおこる仕組みから、それぞれの状況にあった飲み物があるようです。

  • Facebook
  • Twitter
  • はてなブックマーク
飲用水

熱中症は暑さによっておこるいろいろな症状の総称

ヒトの体は暑い環境によって体温が上がると、汗をかくことで体温を下げようとします。
しかし、汗をかいても体温が下がらず過度に体温が上がった状態が続いたり、汗をかくことによって体内の水分や電解質(ナトリウムなど)が過度に失われたりすると、体に様々な症状が現れます。

このときに起こる様々な症状をまとめて「熱中症」といい、重症の場合には意識障害や命の危険も起こりえます。

熱中症のメカニズム同じ環境にいた場合でも、熱中症になりやすい人とそうでない人がいるため、さほど気温が高くなくても注意が必要です。
一般的には、乳幼児や高齢者、暑さに慣れていない人や気温の変化に対応しにくい体質の人は熱中症になりやすいと考えられています。

熱中症対策としての飲み物は電解質と糖がポイント

熱中症は「脱水」「ナトリウム不足」「過度の体温上昇」によっておこるもの。
熱中症にならないためにはこれらの状態の予防が重要です。

飲み物の適切な摂取によって、脱水の予防と脱水症状が進み汗がかけず体温を下げられない状態の予防、ナトリウムの補給を行うことができます。
(気温が高すぎたり、湿度が高すぎたりといったことが原因で、汗をかいても体温を下げられない状態では適切な水分補給をしていても過度の体温上昇は防げないことがあります。飲み物の摂取に加えて、涼しい環境へ移動する、エアコンを使用するなどの対応も必要です)

熱中症の予防のための飲み物のポイントは、
・発汗によって失われる水分を補給できること
・発汗によって失われる電解質(ナトリウム)を補給できること
…が挙げられます。

水分だけでなく電解質を補給する必要があるのは、水分だけの摂取では体液が薄まってしまい、体液の濃度を維持するため水分が排出されてしまうため。
効果的に水分を補給するために、電解質を合わせて補給するのがベストな方法です。

電解質の必要性

厚生労働省では、(労働者の熱中症対策として)「作業場所のWBGT値が基準値を超える場合には、少なくとも0.1~0.2%の食塩水(に相当する)、ナトリウム40~80㎎/100mlのスポーツドリンクまたは経口補水液等を、20~30分ごとにカップ1~2杯程度を摂取することが望ましい」としています。
(ナトリウム40-80㎎/100mlは食塩として0.1-0.2g/100ml)

また、ナトリウムや糖は小腸で吸収されるときに水分を一緒に取り込む作用があることから、水分の吸収を助ける目的で糖を適度に含む飲み物が水分補給にはより効率的です。

経口補水液の浸透圧

WHO(世界保健機関)やAPP(米国小児科学会)、ESPGHAN(欧州小児栄養消化肝臓学会)などから脱水を起こした際の水分補給に適した電解質・糖の組成が示されており、市販の「経口補水液」はこれらの推奨値に沿った内容になっています。

麦茶、スポーツドリンク、経口補水液…それぞれどう違う?

熱中症対策に…といわれる飲み物は多くありますが、その原材料や構成成分はさまざま。
それぞれの違いをまとめてみました。

■水・ミネラルウォーター
電解質:ほとんど含まれない
糖:含まれない
余分なものは含まれませんが、汗で失われた電解質の補給には適していません。

■麦茶
電解質:ほとんど含まれない
糖:含まれない
商品名に「ミネラル」とついたり、熱中症対策に…という広告がついたりしているため、熱中症対策によいイメージがありますが、実際には水とさほど変わりません。
お茶の中ではカフェインを含まないため、利尿作用がないのが魅力です。

■スポーツドリンク
電解質:含まれている
糖:含まれている
商品によっても異なりますが、世界の各機関での推奨される脱水時に適した組成とは異なるものの、吸収を助ける組成になっています。
推奨値よりも糖が多く電解質が少なく、飲みやすいのが特徴です。

■経口補水液
電解質:脱水時に適した組成で含まれている
糖:脱水時に適した組成で含まれている
世界の各機関での推奨値に合わせた組成になっています。
スポーツドリンクより塩味が強く、おいしくないと感じる人が多いようです。

■ソフトドリンク(炭酸ジュースなど)
電解質:製品によって異なる
糖:製品によって異なる
甘くて飲みやすい製品が多い一方で、糖が多く含まれているものの場合、一度に多量を飲むことで起こる急性の高血糖(ペットボトル症候群)の懸念があります。

■お茶類、コーヒー、酒類
お茶やコーヒーに含まれるカフェイン、お酒に含まれるアルコールには利尿作用があり、体内の水分を排出してしまいます。

それぞれの飲み物、どう使い分ける?

それぞれの飲み物の特徴を踏まえ、熱中症リスクの異なる状況ごとに適した飲み物を分類してみました。

■あまり汗をかかない環境に適したもの…水、ミネラルウォーター、麦茶
糖や電解質をほとんど含まない水や麦茶は汗をさほどかかないような、熱中症リスクがあまり高くないときの水分補給に適しています。

■汗をかく環境に適したもの…スポーツドリンク
暑くて汗をかく場面で、熱中症の症状がない場合では糖や電解質をある程度含むスポーツドリンクが適しています。
経口補水液よりも飲みやすく、普段使いにおすすめです。

■脱水症状が疑われるときに適したもの…経口補水液
脱水症状が出ている状態では、より効果的に水分補給をする必要があるため、経口補水液が適しています。
これ以上の発汗と体温の上昇を防ぐため、涼しい環境に移動するなどの対処も合わせて必要です。

■熱中症対策に適さないもの…お茶、コーヒー、お酒、ソフトドリンク
水分の排出作用があったり、糖が多すぎて飲み方によっては高血糖の恐れがあったりするため、水分補給の目的には適していません。
いずれも嗜好品として認識しましょう。

まとめ 状況に応じて使い分けを

あまり汗をかかない状況ではお水や麦茶で十分ですが、汗で水分とともに電解質が失われた状態では効率的な水分摂取方法にはならないようです。
いっぽう、脱水時など熱中症リスクの高い状況では経口補水液などが勧められますが、日常使いにはあまり向いていません。

その時々の状況にあった飲み物を選びたいですね。

参考文献

厚生労働省:「熱中症予防のために」

公益社団法人 全日本病院協会 みんなの医療ガイド:「熱中症について」

厚生労働省:「職場における熱中症の予防について」

大塚製薬:「オーエスワンの使用について」

厚生労働省e-ヘルスネット:「嗜好飲料(アルコール飲料を除く)」

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。