2021.06.14

「グルテンフリー」は健康にいい食習慣なの?|管理栄養士執筆

小麦製品などの「グルテン」を含む食品をとらないようにする食事法である「グルテンフリー」。
健康意識の高い人の中で実践する人も少なくないようですが、グルテンや小麦製品を控えることでより健康になることはできるのでしょうか?

グルテンフリーの食事法の意義や効果について解説します。

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グルテンフリー

グルテンフリーとは?

「グルテン」とは、小麦製品の主要なたんぱく質のこと。
小麦粉に水を加えてこねることで小麦たんぱくであるグルテニンとグリアジンが複合体を形成したものがグルテンとなり、パン生地などの粘りや弾力のもととなっています。

グルテンフリーの食事法では、このグルテンが体の不調を招くものとして、グルテンを含む小麦製品などを控える考え方をとっています。

小麦のほか、麦の仲間の穀物には大麦やライムギ、エンバク(オーツ麦)があります。
これらはいずれもグルテンそのものは形成しませんが、グルテンを構成するグリアジンに類似するたんぱく質を含むことから、グルテンフリー食では小麦と同様に控えられるようです。

小麦製品

グルテンフリーの考え方では、
・グルテンや小麦製品には中毒性があり、依存症になる
・グルテンが腸の消化吸収を妨げ、腸内環境を悪化させる
…と考えられています。
そして、グルテンを控えるグルテンフリーの食生活を続けることで、
・腸内環境が整い、体調がよくなる
・体重が減り、肌がきれいになる
…とされています。

ただし、グルテンフリーについて解説する媒体によって内容は異なり、グルテンフリーの食生活を続けて実際にどんな効果が得られるのかについて、一貫したものはなさそうです。

グルテンや小麦には中毒性があり、依存症になるという説はほんとう?

かつて、グルテンやカゼイン(牛乳に含まれるたんぱく質)は、脳内麻薬ともいわれる神経伝達物質エンドルフィンに似た構造を持つことから、脳内で麻薬のような作用を持つのでは…と考えられていたことがありました。
しかし研究の結果、実際にはそのような作用はないことがわかりましたが、グルテンフリーの食事法ではそのころの考えがいまだに支持されているようです。
よって、この説は誤り。小麦製品に中毒性や依存性はありません。

グルテンが腸の消化吸収を妨げ、腸内環境を悪化させるという説はほんとう?

腸管の免疫機能がグルテンに対して過剰に反応し、炎症を引き起こす疾患(セリアック病)が存在します。
症状としては下痢、腹痛、栄養素の吸収障害、栄養素の欠乏による様々な影響がしられており、グルテンによる体調不良とはこの疾患の症状を指しているようです。

グルテンフリーが日本で注目されるきっかけとなった有名アスリートもセリアック病を持っていたことが知られていますが、基本的には白人種に多い疾患で、日本人の罹患率は低く、2006年の報告では0.7%といわれています。

このような情報からグルテンフリーを実行するようになった人も少なくなさそうですが、このセリアック病は遺伝的な要因が大きいもので、小麦製品を習慣的に食べることで引き起こされるものではありません。
セリアック病ではなく消化吸収機能に問題ない大部分の人がグルテンや小麦製品を食べることで体調不良が起こることは考えにくいでしょう。

グルテンフリーを実践するメリットがあるのは…

そもそも、グルテンフリーの食事法とは、セリアック病や小麦アレルギーによって小麦製品が食べられない人のための食事法でした。

本来、美容や健康増進のための食事法ではなく、よって特に疾患のない健康な人が小麦製品を控えることでより健康になれる、というものではありません。

また、下痢や倦怠感などの自覚症状があったとしても、必ずしもグルテンによる影響、とも限りませんので、自己判断でグルテンフリーの食事をとることは勧められません。
グルテンが体調不良の原因でなかった場合、グルテンフリーの食事を実践することで食事内容が偏り、余計に体調に影響することも考えられます。
反対に、実際に体調不良が小麦製品によるものだったとしても、自己判断での食事療法は医療機関での確定診断の妨げになる恐れもあります。

体調不良がある場合には、まずは医療機関へ相談しましょう。

まとめ 特定の食べ物を怖がるのは避けよう

グルテンフリーの食事に関しては、セリアック病や小麦アレルギーといった疾患を持つ人以外にはあまり意味のないもののようです。

グルテンフリー対応の食品が市場にひろく出回ること自体は、食事に制限のある人が選択できる食品が増えることでもあり、喜ばしいことです。
しかし、特に小麦を避ける理由のない人がわざわざ食事の幅を狭める必要はありません。

小麦に限らず、「○○は体に悪い」「○○が体調不良のすべての原因だった!」といった情報があふれています。
反対に、「○○は体にいい」「○○さえ食べれば健康に!」といった情報もよく聞くものです。

しかし、小麦に限らず、何か特定の食品があらゆる体調不良の原因になることや、反対に様々な不調を打ち消す薬のように働くことはほとんどありません。

特定の食品を過剰に避けたり、反対に過剰に摂取したりすることは、食事の幅を狭め、摂取栄養素の偏りから、場合によっては生活習慣病などの病気につながることも考えられます。

健康のための食生活は、何かに偏るものではなく、なんでもバランスよく食べる…という聞き飽きたものが大事なポイントです。

参考文献

MSDマニュアルプロフェッショナル版:「セリアック病」

星野 浩子、田所 忠弘.セリアック病とグルテンフリー食品 東京聖栄大学紀要,第6号 2014.

中澤 英之, 牧島 秀樹, 石田 文宏. 本邦におけるセリアック病の頻度に関する検討 アレルギー, 55巻 8-9号 p.1116 (2006)

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。