投稿日:2021.01.14 | 最終更新日:2020.12.11

コレステロールが心配…たまごは1日1個まで?|管理栄養士執筆

たまごはコレステロールを多く含むことから、食べすぎはよくない、1日に1個までにすべき…といわれることが多かったのではないでしょうか?

いっぽう、最近では逆に「たまごを食べるとコレステロールによくないというのはウソ。気にしなくていい」と言われることも。

どちらが正しいのでしょうか?
たまごに含まれるコレステロールと、健康への影響について解説します。

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たまご

食べ物のコレステロールと血液中のコレステロール

「コレステロール」にはざっくり分けて2種類があります。
たまごなどの食品に含まれているコレステロールと、私たちの血液中にあるコレステロールです。

この二つのコレステロールは同じものではなく、食べたものがそのまま血液中を流れるということではありません。

血液中のコレステロールにもいくつか種類があり、そのうち「LDLコレステロール」は悪玉コレステロールとも呼ばれ、増えすぎると健康へ悪影響を及ぼします。

LDLコレステロール値が140㎎/dl以上になると脂質異常症のひとつ「高LDLコレステロール血症」と診断されます。
高LDLコレステロール血症を含む脂質異常症は生活習慣病のひとつで、血管の劣化である動脈硬化を経て、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な病気のリスク要因となります。

血中LDLコレステロール値を上昇させる要因にはいくつかがありますが、食品に含まれるコレステロールはそのひとつであることが知られています。

健康診断

たまごに含まれるコレステロール

コレステロールは肉、魚、乳、たまごといった動物性食品に含まれる物質です。
コレステロールは脂質に分類されますが、カロリーはなく、また、脂質が多いほど多く含まれるということもありません。

たまご以外にコレステロールが多いものとしては
あんこうのきも・フォアグラ・すじこ・うずらたまご・たらこ・かずのこなど。

たまごは動物性食品の中でもコレステロールが多く、また、食べる頻度も高いため、食べすぎに注意…と言われるようになったのかもしれませんね。

コレステロールの摂取基準と血中コレステロール

健康維持のために、日々どのくらいの栄養素をとるべきか…を示したものに、「日本人の食事摂取基準」があります。

日本人の食事摂取基準2010年版では、食品からのコレステロール摂取について、18歳以上の男性で750㎎/日未満、18歳以上の女性で600㎎/日未満という目標値が示されていました。

たまご1個に含まれるコレステロールはおよそ250㎎。
さらにほかの食品からもコレステロールを摂取することを考えると、卵は日1個まで…というのは、妥当な説だったようにも思えます。

しかし、その後に改訂された日本人の食事摂取基準2015年版からは、この食品からのコレステロール摂取量の基準がなくなりました。
血中のコレステロールは体内で作られるものもあり、食べ物からのコレステロール摂取量が血中コレステロール値に直結するわけではないと考えられたのです。
よって、「たまごは1日1個まで」というものに明確な根拠はないのが現状です。

これを受けて、「たまごの食べる量に上限はない、いくら食べても大丈夫」といったことが言われるようにもなりましたが、これも正確ではありません。

食事からのコレステロール摂取量と血中コレステロール値について、「無関係」とまでは言われていないのが現状です。
日本人の食事摂取基準2015年版でも、コレステロールの摂取量について「上限がないことを保証するものではない」とされており、いくら食べても大丈夫、と言っているわけではないのです。

また、これはあくまで脂質代謝に異常のない健康な人の場合。
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版や食事摂取基準2020年版では、高LDLコレステロール血症と診断された場合には、コレステロールの摂取量を1日当たり200㎎未満にすることが望ましいとされています。

健康診断等で血中コレステロール値を指摘された人は、引き続き注意が必要なようです。

血中LDLコレステロール値を上げるコレステロール以外の要因

たまごなどに含まれるコレステロールのほか、複数の要因が血中LDLコレステロール値を上げることが知られています。

血中LDLコレステロール」値を上げる要因になるのは、

飽和脂肪酸(油脂の構成成分で、動物性脂肪に比較的多い)の摂取量
肥満
運動不足
高血圧
喫煙

といったもの。

血中LDLコレステロール値のコントロールのためには、いろいろな角度から改善をしていく必要があることがわかります。

「コレステロール高め」を指摘された人は気を付けて

たまごはコレステロールを多く含む食品であり、食べる頻度も高いというのがポイントのようです。
食品に含まれるコレステロールが病気に直結するという訳ではありませんが、全くの無関係という訳ではありません。

健康診断などで血中LDLコレステロール値が高いことを指摘されている人でなければ、通常の食生活でさほど気にする必要はなさそうですが、いくら食べても大丈夫という訳ではなく、また、血中コレステロールが高いといわれた人は要注意。

生活習慣病の予防や改善のため、血中コレステロール値にかかわる要素の一つとして、日ごろから気を付けたいポイントとなりそうです。

参考文献

文部科学省:「食品成分データベース:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

厚生労働省e-ヘルスネット:「脂質異常症」

厚生労働省:日本人の食事摂取基準(2010年版)

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」 報告書

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版

女子栄養大学:「学びの扉 卵は食べすぎても大丈夫?」

佐々木 敏:データ栄養学のすすめ.女子栄養大学出版部,2018.

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。