
「魚を食べると頭がよくなる」はどこから来た説?
そもそも、なぜ魚を食べると頭がよくなるといわれるようになったのでしょうか?
それは、魚には「DHA(ドコサヘキサエン酸)」という成分が多く含まれているためです。
DHAは脂質の一種で、n-3系脂肪酸というグループに属します。
DHAは脳をはじめとする神経組織の発育や機能の維持に大きくかかわることから、DHA、およびDHAを多く含む魚を食べることで、脳の発育や機能の向上に効果があるのでは…と考えられたのです。
補足すると、DHAは魚に多く含まれますが、魚から摂取しなくてはいけないわけではありません。
植物油などに含まれるDHA以外のn-3系脂肪酸が摂取できれば、体内でDHAに合成することもできるため、必ずしもDHAとしてとる必要はありません。
DHAは脳にとって重要な成分。しかし…
魚に多く含まれるDHAは脳の発育や機能の維持に重要であることは確かです。
しかし、魚やDHAを通常の食生活で食べる以上に食べたときに脳の働き(記憶力や知能など)が向上したというような「頭がよくなる」効果については、明確な有効性は示されていないのが現状です。
通常の食材としての魚のほか、DHAや魚油を用いたサプリメントであっても、「頭をよくする」効果は証明されていないため、過信は禁物といえそうです。
不足しないように…とサプリメントを利用している場合もありますが、上で紹介した通り、DHAは植物油由来のn-3系脂肪酸から体内で合成することもできるため、魚の摂取量がさほど多くなくとも、通常の食事では不足の心配はありません。
体が著しく成長する子どもの場合、大人に比べてよりたくさんの栄養素が必要となる場合もありますが、脳の発達に関しては、基本的に余分にとるべき栄養素はありません。
子どもの脳を育てるために気を付けたいこととは
子どもの脳やその働きの発達において、特別にとるべき栄養素というものはありませんが、子どもが脳を使って考えることを妨げないような体の状態は作ってあげたいですね。
健康が損なわれた状態で深く考えることや、勉強への集中力を保つことは大人でも難しいもの。
食事の面では、子どもが健康な状態を保てるように、お魚を含めいろいろな食材を用いたバランスの取れた食事を用意してあげることが大事です。
食事以外にも、十分に睡眠をとる、適度に運動をする…など、心身の健康を維持することが脳の働きを伸ばすためにも大事ではないでしょうか?
たくさんとるに越したことはない?…そんなことありません
DHAに限ったことではありませんが、特定の栄養素・食品成分の過剰摂取には注意が必要です。
サプリメントなど、特定の成分を抽出したものでは、普段食べている食品よりも高濃度に特定の成分を含むため、過剰摂取につながりやすいことが問題視されています。
特に体の小さい子どもでは、大人よりも少ない量で過剰摂取による害が出やすいことが懸念されています。
魚に含まれるDHAも通常の食事からとる量では心配ありませんが、サプリメントなどからの3g以上の摂取は大量摂取となり、有害事象が報告されています。
まとめ 健康な発達・発育のために魚「も」食べよう
魚は肉類とは異なる栄養的な特徴もあり、適度に食事に取り入れたい食材です。
そのため、魚を食べない子どもに対して、魚に興味を持ってもらう、食べてもらうために「魚は脳みそをよく働かせてくれるんだよ」「魚を食べると頭がよくなるんだよ」といった声掛けをするぶんには、問題はあまりないでしょう。
しかし、食卓が魚ばかりに偏ったり、過剰摂取の恐れのあるサプリメントをむやみに取り入れたりすることはオススメできません。
大人の立場では「魚を食べると頭がよくなる」はあまり鵜呑みにせず、ほどほどに取り入れるのがよいでしょう。
参考文献
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所:「健康食品」の安全性・有効性情報(DHA、n-3系不飽和脂肪酸、魚油について)