2022.01.10

バターとマーガリン、健康のため選ぶならどっち?|管理栄養士執筆

バターとマーガリンはもともと似せて作られたものであり、味や栄養面で比較されることも少なくありません。

健康のためには、バターとマーガリンのどちらを選ぶべきでしょうか?
栄養成分や健康への影響について、比較してみました。

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バターまたはマーガリン

バターとマーガリンの違いとは?

似せて作られたバターとマーガリンですが、原材料や製法、成分の構成などに違いがあります。

原料について、バターの多くは牛乳由来の乳脂肪が主原料となっています。
乳脂肪に食塩を加えた「有塩バター」が主流です。

一方、マーガリンの主原料は植物性油脂であり、製品によっては魚油、ラード、牛脂などが使用されています。さらに、水、乳化剤、乳成分、ビタミン類が加えられています。
一般的にマーガリンと呼ばれている「マーガリン類」はその油脂含有率によってマーガリンとファットスプレッドに分類されます。
日本の家庭用マーガリンは油脂含有率80%のファットスプレッドが主流となっています。

バターとマーガリンそれぞれの主なものとして、有塩バターとファットスプレッドの栄養成分を比較してみましょう。
■有塩バター(10gあたり)
エネルギー 70kcal
たんぱく質 0.1g
脂質 7.5g
炭水化物 0.7g

■ファットスプレッド(10gあたり)
エネルギー 58kcal
たんぱく質 0g
脂質 6.4g
炭水化物 0g
(日本食品標準成分表2020年版(八訂)より)

ともにほとんどが脂質からなり、たんぱく質や炭水化物は微量のみ含まれています。
油脂含有率が比較的低いファットスプレッドは、バターと比較すると重さあたりのエネルギーはやや低めです。
バターとマーガリンでは、ともに主成分となる「脂質」の内容に違いがあることが知られています。

脂質の内容:脂肪酸組成の違い

脂肪酸とは脂質の構成成分であり、いくつもの種類があります。
脂肪酸はその構造の違いによって体内でさまざまな異なるはたらきをするため、同じ「油脂」であっても、どの脂肪酸からできているか=脂肪酸組成の違いによって、体に与える影響が異なります。

トリグリセリドの組成

脂肪酸の分類にはいくつか種類がありますが、今回は「飽和脂肪酸」「一価不飽和脂肪酸」「多価不飽和脂肪酸」の3種類に分類したときの組成を比較します。

■有塩バターの脂肪酸組成(10gあたり)
飽和脂肪酸 5.0g
一価不飽和脂肪酸 1.8g
多価不飽和脂肪酸 0.2g

■ファットスプレッドの脂肪酸組成(10gあたり)
飽和脂肪酸 2.0g
一価不飽和脂肪酸 2.1g
多価不飽和脂肪酸 2.0g
(日本食品標準成分表2020年版(八訂)より)

バターとマーガリンの脂肪酸組成を比較すると、バターでは飽和脂肪酸が多く、ファットスプレッドは多価不飽和脂肪酸が多いことがわかります。
成分値にはデータがないものの、多価不飽和脂肪酸のなかに「トランス脂肪酸」が含まれており、健康への悪影響が心配されています。

 

トランス脂肪酸を含むマーガリン、飽和脂肪酸が多いバター

トランス脂肪酸とは、脂肪酸のうち、構造の一部が一般的なシス型とは異なるトランス型になっている脂肪酸のことです。

シス型とトランス型

自然には牛の胃の中にいる微生物のはたらきで作られるほか、マーガリン類などの製造中の水素添加の過程で一部生成することが知られています。

製品によって幅があるものの、平成18年度の調査では、ファットスプレッドには1~10%、平均では5%ほど含まれていると報告されています。
近年ではメーカーによるトランス脂肪酸低減の取り組みも積極的に行われており、平均的な量はもっと少なくなっているかもしれませんね。

トランス脂肪酸は血中のLDLコレステロール値を上げる作用を持つことから、動脈硬化などの生活習慣病のリスクを高める食品成分であるとして、なるべく摂取量を抑えたいものとされています。
乳製品や肉類に含まれる自然由来のトランス脂肪酸ではこの作用はなく、問題となるのは人工的に生成したトランス脂肪酸のみです。

この人工由来のトランス脂肪酸が含まれるためにマーガリンは体に悪い…といわれることもありますが、バターに多い「飽和脂肪酸」も注目したいポイントになります。

飽和脂肪酸はトランス脂肪酸ほど知名度がありませんが、トランス脂肪酸と同様に血中LDLコレステロール濃度を上げる作用を持ち、動脈硬化性疾患のリスク要因となることが知られています。

白黒はっきりとした結論は出せない

このような理由から、トランス脂肪酸だけに注目し、マーガリンはだめでバターはよい…と簡単に結論付けることはできません。

飽和脂肪酸のはたらきはトランス脂肪酸の半分程度と見積もられているものの、その習慣的な摂取量はトランス脂肪酸よりもはるかに多く、実際に血中LDLコレステロール値に与える影響は飽和脂肪酸のほうが大きいと考えられています。

人工由来のトランス脂肪酸を含むマーガリン、飽和脂肪酸が比較的多いバター。
どちらも動脈硬化性疾患リスクを上げる食品成分を含むものであり、摂取量には気を付けたい…といえそうです。

まとめ どちらもなるべく控えめ、が落としどころ?

トランス脂肪酸にしても、飽和脂肪酸にしても、マーガリンやバターだけに注目して「徹底的に排除」してもあまり意味がありません。

私たちが摂取しているトランス脂肪酸はマーガリンそのものよりも菓子類・パン類・マーガリン以外の油脂類・インスタント食品からの摂取が多いことが知られていますし、飽和脂肪酸に関しても、肉類や乳製品などからの摂取量が多くなっています。

トランス脂肪酸・飽和脂肪酸ともに必須の栄養素ではなく、摂取量はなるべく抑えたいものです。
しかし、日本人の平均的なトランス脂肪酸の摂取量はWHOが提言する目標値を達成しているものであり、飽和脂肪酸に関しても食事摂取基準2020年版(厚労省)での目標は「現在の平均摂取量未満」とされており、限りなくゼロにする必要性は今のところありません。

トランス脂肪酸にせよ、飽和脂肪酸にせよ、徹底的に排除しようとすると、食事の選択の幅を狭め、かえって栄養バランスが崩れたり、食事の負担が大きくなりすぎたりしてしまいます。

特に食事の制限がない人の場合には、バターとマーガリンのどちらを選んでもよいし、どちらもとりすぎ注意、というのが結論となりそうです。

参考文献

日本マーガリン工業会:「マーガリンの基礎知識・マーガリンのできるまで」

文部科学省:「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会」 報告書

Kobayashi S, et al. Both comprehensive and brief self-administered diet history questionnaires satisfactorily rank nutrient intakes in Japanese adults. J Epidemiol 2012; 22: 151-9.

Yamada M, Sasaki S, Murakami K, Takahashi Y, Okubo H, Hirota N, Notsu A, Todoriki H, Miura A, Fukui M, Date C. Estimation of trans fatty acid intake in Japanese adults using 16-day diet records based on a food composition database developed for the Japanese population. J Epidemiol. 2010; 20(2): 119-27.

Satoshi Sasaki, Minatsu Kobayashi, Shoichiro Tsugane. Development of Substituted Fatty Acid Food Composition Table for the Use in Nutritional Epidemiologic Studies for Japanese Populations: Its Methodological Backgrounds and the Evaluation. Journal of Epidemiology, 1999; 9(3): 190-207

Joint WHO/FAO Expert Consultation on Diet, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases (2002 : Geneva, Switzerland) Diet, nutrition and the prevention of chronic diseases: report of a joint WHO/FAO expert consultation, Geneva, 28 January — 1 February 2002.

内閣府食品安全委員会.食品に含まれるトランス脂肪酸に係る食品健康影響評価情報に関する調査報告書,2010.

平井 しおり管理栄養士
平井 しおり管理栄養士

2013年に管理栄養士資格取得後、保育施設に勤務、栄養相談などに従事。

現在は「イマカラ」にて、栄養とダイエットに関する科学的根拠に基づいた情報を発信しています。